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1話

「うっそ…」 連休明けの火曜日、出勤したら会社が倒産していました… お願い、誰か嘘だと言って… 金曜日の時点では、何の前触れも無かったのに…! いや、ちょっと危ないんじゃないか、みたいな噂は先輩とかから聞いてはいた。 聞いてはいたけど、こんなすぐに、しかも何の知らせもなく倒産するものなの?! 「栗田。」 「先輩!これ…!」 「本気でヤバかったみたいだな。社長は連絡つかない上に、行方不明だと。」 「そんな…これからどうすれば…」 「何とか次の仕事を早く見つけるしか無いな。」 「次…」 …そうだよね。 会社が無くなったんだから、次の仕事探さなくちゃ。 でも、このご時世に次の仕事なんて簡単に見つかるのかな… これといったスキルも無いし… 「いい所あったら、お前にも教えてやるから。そんな不安そうな顔すんなよ。」 「ありがとうございます…」 「ここに居ても仕方が無いし、書類関係は郵送だって言ってたから、とりあえず家に帰るか。」 「…そうですね。」 家に帰っても、きっと落ち着かないだろうけど。 …そうだ。 裕也今日休みだって言ってたし、連絡してみよう。 話聞いてもらったら、少しは落ち着くかも。 『電源が入ってないか、電波の届かない所に…』 「あれ?おかしいな。休みのはずなのに。」 出ない事はあるけど、このアナウンスが流れたのは初めてかも。 また後でかけてみよう。 「出社して1時間半で帰宅とか、理由が理由だけに悲し過ぎる…ん?」 今うちのマンションから出てきたの、裕也じゃない? 電話に気付いて家に来てくれたのかな。 でも、何であんなに急いで出て行ったんだろ。 もう一回電話してみようかな。 『電源が入ってないか…』 「やっぱり繋がらない。」 …何だろう。 なんかちょっと胸がざわざわする。 とにかく、家に帰ってみよう。 「あれ…?」 引き出しが空いてる。 開けっぱなしだったかな。 …ううん、今朝はここ触ってないはず。 「え…通帳と印鑑が無い…!指輪とネックレスも無い…!」 まさか裕也が…? 「そんなわけないよ…だって、裕也がこんな事するわけない。それに、来年結婚しようって言ってくれてたんだから。」 もう一回電話してみよう。 『…電波の届かない所に…』 どうして…? こんなに繋がらない事なんて、今まで一回も無かったのに… もう一度部屋を見渡して見ても他にはどこも荒れた様子がなくて、ピンポイントでその引き出しだけ探られてる。 つまり、そこにあることが最初から分かってたって事だよね。 …裕也は合い鍵も持ってるし、そこに通帳が入ってる事も知ってたはず。 ということは、やっぱり裕也が… 「こんな裏切り方…あんまりだよ…っ」 何で?どうして? 裏切られた事がただただ悲しくて、ショックで… 次から次へと涙が溢れてくる。 「…泣いてる、場合じゃない…とにかく、カードで先にお金下ろしてこなきゃ。」 今の私は仕事も失ってる。 失業した上に、恋人に裏切られて無一文なんて笑えなさすぎる。 まずは自分の生活をどうするか考えなきゃ。
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