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「これ、触っていいですか?」
微妙に半勃ちになっている眞樹のものに、柔らかく指が絡まってくる。
「まてよ、そっちいじったら中イキできねえって、言ってたのおまえだろ」
「ん、でも全然反応がなかったら難しいので、ちょっと前立腺を刺激しておきます」
やめろ、と止める前に彼がゆるくしごいて来た。中でときどき走る震えとは違う、明確な快感が引き出されて、眞樹は思わず彼の腕を掴んだ。
止める意図ではなかった。くびれを軽く締め付け、上下に動かされただけであっけなく硬くなってきた。いつも通りの快感に、すぐに流されてしまう。
「気持ちいい?」
ふんわりとした唇が近づいてきて、目を閉じる。しっとりと押し付けられた唇に、軽く開いて応える。唇の裏側の粘膜が重なって、ふわっと気分が高揚した。
もういい。このまましごいで出してしまいたい。腹の中に男のものを入れて、ごりごり動かれて、頭ががおかしくなるような快感を引き出したいと彼に言ったのは自分だが、どうしようもなくバカバカしい考えのように思えてきた。
半分は彼の口車に乗せられた。できるわけがないそんなこと。なのに学校の帰りに後輩の家に寄って、ベッドの上で這いつくばっているなんて、狂気の沙汰だ。
もうやめようと言うべきだろうか。これが終わったら言ったほうがいいんじゃないか。不毛なことはやめて、胸の痛みに耐える方が早いんじゃないか。
しかし眞樹の意識が逸れたのに気づいたのか、それとも彼のタイミングだったのか、ずるっと舌が口内に入ってきた。そしてくすぐるように上顎を刺激してくる。
「――っ、」
ぬるっとした粘膜に上顎を往復され、すぐに口の中が痺れてきた。
一回目のセックスから、彼は口内の弱点を見つけ出して容赦なく責めてきた。唾液が湧いて、唇の端から零れ落ちる。ぞわぞわっと痺れが染み出して、口内だけでなく背筋から全身へと力が抜けてきた。
くちゅっと舌が抜けても、口が閉じられない。ぼんやりと涙の膜で歪んだ視界の中、駿介がにんまり笑った。
「可愛い、眞樹さん」
もう一回、ちゅっと唇を吸ってから、彼は体を軽く起こした。
「こっちもいい感じに育ってる」
指先でぬるっと先走りを塗り広げた。じん、と快感が湧き出たと思ったとたん、腰の奥が熱くなってきた。
「え、っ、あ、」
覚えのない感覚を掴もうと、声がもれそうになる。指が勝手に力が入って、ぎゅっと駿介の腕を掴んだ。熱い痺れがじわじわと広がってくる。
気持ちいい、と言っていいのだろうか。妙な感覚があるといった方がまだ近い気がする。くすぐったいような、痒いような、もっと触れて欲しくて腰が勝手にうごめく。
「や、ば」
びくっと背中が跳ねた。駿介はもう一回抱えなおして、ついでのように腰を軽く揺らしてきた。
内側のどこかをぐにっと刺激され、電流のようなものが駆け上がってきた。ぎちっと指に力が入る。
「うーん。アザになりそう……」
駿介がつぶやくのが、遠くから聞こえてくる。指が食い込んで痛いのだろう。
何とかしてやりたかったけど、こっちは感覚を捕まえようと必死で追っているせいで構っていられない。意図して力を抜くことなんてできなかった。
「どうです? イける?」
必死で彼にしがみつきながら、それでもまだ波にさらわれるほどではなかった。
「もっと、その、へん」
言いながら、掴み損ねたものは次第に引いていき、かすかな痺れだけを残して去って行った。
眞樹が頭を横に振ると、彼はくすりと笑った。
「まあいいか」
「……わり」
「いえ、今日はちょっと進歩したみたいだし、これからゆっくりやればいいですよね。じゃあ動きますよ」
頷くよりも前に、体の中から強烈な感覚が湧きあがってきた。
「――、う」
呻き声がもれてくる。今度は快感からではない。駿介は心配そうな顔をしながらも、やめる気配すら見せず眞樹の中を荒らし始めた。
じゅぷ、じゅぷ、とローションを泡立てながらの速い抜き差しのせいで、粘膜をこする引きつるような痛みと、押しあがってくる違和感と、抜かれるときの生理的な快感とが一緒に襲ってきて、洗濯機の中に放り込まれたようにかき混ぜられる。
「う、うう、っ、く、も、う、いい、だろ」
制止の声も途切れてしまう。とはいえさすがにこの状況で男が止まれるはずがない。それは眞樹にもわかっている。
「すみません、もうちょっと」
ずりずりと往復されて、不快感だけが襲ってくる。ただもう早く終わってほしいと思うだけになった。
最後はいつもこんな感じになって、耐えるだけになってしまう。
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