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1 いつも好き放題しやがって
ずるっと内部を擦られる感覚があって、眞樹は奥歯を噛みしめた。
「そんなふうにしてたら気持ちよくなれませんよ」
背後で苦笑する気配にむっとする。好きでやっているわけじゃない。違和感がひどくてなかなか馴染めないのだ。
「っ、せえ、よ」
息が上がる。出すところの器官を逆撫でられて、鳥肌が立ちそうなほど気持ちが悪い。だけど途中でやめるつもりはなかった。
やろうと言い出したのは自分だった。歯を緩めて力を抜こうとする。体中の関節はがちがちに強張っていて、なかなか思ったようにいかなかった。
駿介がするりと宥めるように背中を撫で、指先が尾てい骨に動いた。くすぐるように快感を煽るとわずかに強張りが解ける。
そしてまたずるっと中のものが動いた。張り出した部分が敏感なところをかすめて呻き声がもれる。
「このへんなんですけどねえ」
そのまま軽く揺らされると、狭い部分が小刻みに押し広げられた。詰めていた息を吐き、また鋭く吸って息を止めて神経を研ぎ澄ませる。
このへんか。どんな感じだ。じわっと痺れが上がってくるだけで、彼の言うように全身が満たされるほどの快感はない。丁寧にマッサージされてから入れたのに、すぐには上手くいかないようだった。
「どうします?」
「仰向け、に」
眞樹がようよう言うと、ゆっくりと引き抜かれた。
このときばかりは生理的にぞくぞくするような快感があって、吐息とともに軽く背中が反った。
「……えっろ……」
かすかに駿介がつぶやくのが聞こえる。
「この感じを見てると、すぐに中で気持ちよくなれそうなんですけどねー」
いくぶん不満そうに言って、肩を掴んでくる。眞樹は足を入れ替えて体を返した。勉強机の上の明かりだけが灯された部屋の、薄暗い天井を見上げる。
学校を終えて連れ込まれた駿介の家は、人の気配がなくふたりきりだ。もう何度も来ているのに、家族に会ったことがない。いないときを見計らって誘っているのだろう。
外はそろそろ街灯が点くくらいの時間で、ベッドで裸になってからはほぼ一時間くらいだった。
道具は全部揃っていて、自分はただ寝そべりながら丁寧にマッサージされ、要求に応えていた。彼は慣れているようだった。
覗き込んできた優しい風貌の男は、不満そうな、どことなく面白がっているような、不思議な表情だった。わりと最初から彼はこんな感じだった。
全く経験がなくて戸惑っている自分を興味深そうに、懇切丁寧に、じっくりと手をかけてくる。
「んな、うまく、いけば」
いいんだけど。言おうとすると腰を抱えあげられて喉がつぶれる。
ひたりとまたほころんでいる場所に切っ先が当てられた。びくっと腰が震える。
「いつもいつも緊張しないでくださいよ。もう一〇回目くらいでしょ」
駿介が揶揄うようにくすくす笑った。
年下のくせに余裕綽々で腹が立つが、たぶんこういうことは彼に一日の長がある。任せるしかないのだ。
「何回やっても慣れねえよ」
「そんなことありませんよ。ほら、開いて」
やり方はもう教え込まれている。軽くいきむと、穴は彼のカリ首までをずぷんと呑み込んだ。
確かに少しずつ慣れてきている。だけど目指すところまではまだまだかかりそうだった。太い部分がずずっと中を上がってきて、一点に止まった。
ある場所を内側から刺激すると、人生が変わるほどの快感があるという。それを探しているけれど。
「ちょっとこのままにしてていいですか?」
汗で髪が貼りついたらしく、駿介はゆるくウェーブのかかった柔らかい髪を掻き上げた。
丸くて柔らかい微笑みをたたえる目が軽く細まって、額に触れてきた。髪も目も色素が薄くて、人形のように造りが整っている。
「ほら、眞樹さんもリラックスして」
スポーツの最中のように気軽に声をかけてくるが、身体の内側から圧迫されて、こちらはそれどころではない。
「できねえよ。男のモノ、くわえこんだままだってのに」
「大丈夫。だんだん順応してきますから」
押し出したくてたまらない違和感と戦っている自分を前にして、彼は涼しい顔をしている。
可愛げもへったくれもない、きつくて怖いと言われたことがある切れ長のうろんな眼差しで睨んでいると、駿介の指は頬を伝い、顎を撫でた。
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