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「で? 幽霊探しってのは?」
ヘクターがお茶に口をつけながら聞く。
すでに、ノゾミとカリノ、マルスはあまり興味が無さそうだ。
「最近、城に幽霊が住み着いているらしくてね。特に強くもないんだが、魔力と事件に事欠かない魔王城だからね。
いつ激つよ幽霊にクラスチェンジして、魔族の子たちを呪い始めるかもわからないだろ?」
だから、早々に解決しておきたいということらしい。
アンデッドの魔族は多いが、アンデッドだからといってアンデッドを倒す力を持つものはほとんどいないため、厄介な敵であることは変わらない。
「まだ感知にも引っかからないレベルでな。まぁ、感知に引っかかれば、退治なんて易いってのに、なぁーんで協力させようとするかね?」
キルケゴーンの大切な人形こと、先々代魔王の魂入りであり、キルケゴーンの夫は、愛らしい姿で肘をついていた。
「友情努力勝利! それが、子供たちの情緒教育には必須事項さ」
「ユージョードリョクショーリ?」
片や、悪魔界公爵である大悪魔マルス。
片や、死と呪いを司る神の巫女ノゾミ。
どこに情緒を再教育する余地があるだろうか。
「ギリギリ坊主なら……」
「お、俺……? でも幽霊なんて……」
見えないし、塩を撒くくらいしか方法は知らない。
どうしろというのか。
「ぶった切ればいいんだよ」
「切れないっすよ!? つか、カリノさん、霊切れるんすか……」
物理的には規格外とも言える男だが、幽霊まで切れるとは思ってもいなかった。
もしかしたら、この世界の幽霊というものは、アメリカ映画のように物理攻撃が聞くタイプなのだろうかと、そっとヘクターにも目をやれば、苦笑いしながら手を振られた。
「ないない。ゴースト斬るには、呪いのこもった武具が必要だよ。
まぁ、オジサンも一応は持ってはいるけどな」
魔王軍の幹部になるほどの人間であれば、何かしらの特殊な力を持ち合わせている。ヘクターも身に着けている武具全てに何かしらの呪いは掛けられている。
「でも、お前さんに貸すには、ちょっと重いかな」
「そ、っすね」
数カ月前までただの高校生をしていたフジが、いくらスキルや魔法で補助をしたところで、歴戦の戦士であるヘクターが使っている武器を軽々と扱えるほどの筋力はない。
「興味があるなら、私が不死殺しの呪いをかけてあげましょうか?」
突然、フジの両頬に手をやり、目をのぞき込みながら、うっすらと微笑むノゾミ。
「たった一言、はい。と言えば、我が祝福を与えましょう」
ぞわりと駆け上がる感覚に、首を横に振った。
その返答に、ノゾミは少しだけつまらなさそうに口元を下げると、ヘクターの膝の上に寝転がった。
「オジサン、このあと用事があるんだけど。カリノの方にいきなさいな」
「カリノはぶった切れるなら何でもいいって二つ返事だった」
「そうかい。ほらーおきろーいや、起きなくてもいいけど、おーい」
軽く叩くものの退く気はないらしい。ヘクターも諦めたようにため息をついた。
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