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2話 幽霊探しとアンデッド縛りの魔眼
結局、フジはキルケゴーンから渡された水晶と共に城の中を歩いていた。
曰く、水晶越しに幽霊の姿を捉えれば、幽霊を捉えることができるという。
「おや、おひとりとは珍しい。こんにちは」
「フィズィさん? こんにちは」
軽く頭を下げるフジに、八柱のひとりであり、初代魔王の側近であったフィズィも嬉しそうに微笑む。
「あ、いや、キルケさんに幽霊探しを頼まれて……」
「あぁ……先程の。なるほど。それで、キルケの目を持っていたのですね」
「……へ?」
「おや、説明されていなかったのですか? それは、正真正銘、キルケゴーンの眼球ですよ」
思わず手に持った水晶を落としそうになるが、慌てて両手で包み込む。
「どどどどどういうことっすか!?」
どこからどう見てもただの水晶だ。渡された時も、もちろんキルケゴーンの目は健在だった。眼球というのは、ただの比喩で、実際は”キルケゴーンの目の役割を果たす魔道具”程度の意味かもしれない。
しかし、フィズィの言葉は嘘をついているようではなくて、両手を開いてその水晶を見つめる。
「そうですね。本来、魔眼というものは、持っている人間の目そのものに埋め込まれている術。キルケはその魔眼を大量に持っています。
幾重にも折り重なった魔眼は大量の魔力を消費し、彼の大魔女といえ、全ての魔眼を常に全力で発動させていれば、半日も持たないでしょう」
魔眼の中にも、視界に入った生物の魂を抜き取るもの、時を遡るものなどから、遮蔽物を無視することのできるや海の向こうまではっきり見えるまで、様々なものが存在する。
「まぁ、彼女は老眼が進みそうだとかで、魔力の込められた水晶にひとつひとつ移しているそうですが」
本来、眼球に埋め込まれた魔眼は移すなど不可能。そうでなくては、魔眼を欲しがる者たちが、保持者から眼球を抉りだすなどを行わなくていいだろう。
それを軽々とやってのけるところは、さすがとしか言えない。
「そ、それって、バレたら狙われません?」
「狙われますね」
「!!」
「城にいる限りは平気でしょう。その目は、あくまでキルケゴーンの目。今だって、彼女はそこから見ていますよ。
それに、城は彼女が聞き耳を立てたいがための魔法がそこかしこに仕組まれていますから。確か、ヒノモトでは”壁に耳あり、障子に目あり”というのでしたね」
「それはそれで心配なんすけど……」
この城にプライベートというものはないのだろうか。
ノゾミとマルスがたびたび呆れたように、キルケゴーンのことを噂好きマダムと評する理由が少しわかった気がした。
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