3人が本棚に入れています
本棚に追加
城内を歩き回るもののいまだ収穫はゼロ。
何人かの魔族に、幽霊について聞いたものの首を横に振られるばかり。
次はどこを探すべきか、頭を悩ませていれば、ふと見つけた影。
「あ」
「げ……」
それほど仲がいいつもりもないが、悪いつもりもないその元天使に、フジも少し戸惑っていれば、答えは真後ろから帰ってきた。
「ブラボー! 予測に違わぬ反応に、さすがはリッチーと呼ぶべきでしょうか」
「…………いつからいたんすか」
八柱のひとりであり、リッチーのビックバーン。八柱の中では、ある意味友好的だが、ある意味八柱に違わぬ危険人物のひとり。
「先程です。えぇ、貴方がそこの曲がり角を曲がったところからです」
本当に先程らしい。
「帰っていいか?」
「俺ひとりでこの人の相手はできないのでいてください。お願いします」
素直に頼めば、意外に願いを聞いてくれる元天使であるアンジュは、嫌な顔をしながらもその場に留まってくれるらしい。
「さて、我輩、貴方の目的はよぉーくわかっています。えぇ、わかっていますとも!
先ほど、キルケゴーンが言っていた霊の件ですな? ここは笑うところですぞ」
ひくりともしないふたりの笑いを待っているビックバーンに、笑えるか判定するからと、アンジュはフジに小声で話しかける。
「お前、その手に持ってるのって」
「霊を見つけたら拘束できるようにって、キルケさんから渡された、魔眼らしいです」
「そりゃいい。アイツはアンデッドだ。その魔眼なら拘束できる。ちょっと向けてみろ」
「えぇ……」
「イヤなら、俺は帰る」
ここでひとりで、ビックバーンの相手をさせられるか、ビックバーンを拘束するか。
「さてさて、判定はいかがですかのァッ!?」
水晶からビックバーンをのぞき込めば、半透明の杭が円形に取り囲み、ビックバーンに突き刺さった。
「ナイスだ! ズラかるぞ!」
「す、すみません!!」
一応謝ってから、アンジュの後ろをついていく。
「あ、待って。我輩は、ゴーストを素晴らしく最高に爆発して、冥府まで送って差し上げたいだけ――!!」
「だと思ったよ!! バァーカ!!」
子供のような捨てセリフを残して走るアンジュに、何も言わずにフジも同意した。
爆発が日常茶飯事とはいえ、進んで近くにいたいわけではない。むしろ、術者が、爆死で死ぬならば素晴らしいことだと豪語しているリッチーな分、危険だ。
ビックバーンが見えなくなるほど遠くまで逃げてから、アンジュにも幽霊について聞くが、知らないの一言。
「天使って、そういうのわかるんじゃ……」
「そりゃ、大天使様なら救いを求める魂も見つけられるだろうが……それがめんどうでサボったら、堕とされたんだし」
「そんな理由だったんですね……」
「あ゛?」
「す、すみません……」
天使とは思えない視線を向けられ、つい顔を背ければ、ため息をつきながら、頭をかき、ある方向に視線をやった。
「まぁ……アレだ。ここは、ノイズがひどいからな」
「ノイズ?」
「デケェ音源があるんだよ」
顎で示された方向にあったのは、魔王城の庭に作られた研究施設。
最初のコメントを投稿しよう!