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幕間 ──UNKNOWN
──優しい日差しと、暖かな春風。
そんな穏やかな気候に似つかわしくない、まるで闇を切り取ったかのような漆黒のロングコートに身を包んだ少年が、雑居ビルの屋上に設置された貯水槽に座り黒曜石のような黒い瞳で眼前に広がる街並みを見下ろしていた。
──不意に、少年が立ち上がる。吹き付けた春の風が、その黒髪を揺らした。
「…………動き出したか」
ぽつり、と。少年は顔を上げると同時に独り言を呟く──年相応だが、どこか低く押し殺された声が、空に溶ける。
──ふ、と。風が止む。
黒い曇に日差しが遮られ、少年が見下ろしていた街並みに影が落ちた。
少年は無表情のままおもむろに懐に手を伸ばし、なにかを取り出す──それは、目から鼻までを覆い隠してしまいそうな、仮面のような漆黒のバイザー。
所々に機械的なモジュールの施されたそれを無造作に被り、少年は口を開いた。
「──任務対象、“香美 有利栖”。
……作戦行動を開始する」
そう早口で呟くや否や、少年は力強く貯水槽を蹴り、影が落ちた街にその身を踊らせた──。
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