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第8話 ──決意
──それから5分程経った頃。
有利栖は、なんとか落ち着きを取り戻していた。
真っ赤に腫れた目を擦りながら、ゆっくりと修也から離れる。
「修也……ごめんね、ありがとう」
「いや、構わないよ。君が謝ることじゃない」
「……で、ね。修也。私、決めたの」
有利栖はそう言い、腫れた目を真っ直ぐ修也に向ける──その瞳は力強く、迷いは感じられない。
修也もバイザーを外し、真剣な表情でその瞳を真正面から受け止める。
「私……この子と一緒に戦いたいの。
兎月は、この子がいたから不幸になったのかも知れない。夢の中でも、兎月は最後まで私が不幸になるかも……って、心配してた。
……でも! この子を私に託してでも、叶えたい夢……ううん、“ねがい”が兎月にあったんだと思う。
私は……その夢の続きを、この子と一緒に見たい」
指先に停まったモンシロチョウを見つめながら──夢の中の兎月の姿を思い浮かべながら、有利栖は力強い口調でそう言った。
それに対して修也は、まさか有利栖が戦いたいなどと言い始めるとは思っていなかったようで、隠すこと無く困惑の表情を浮かべる──だが、有利栖の真っ直ぐな瞳をもう1度見つめ、ハァと大きなため息を吐いた。
「……なにを言っても決意は変わらない、って顔してるな。
分かったよ。そう言うことなら、俺は全力で君をサポートする」
「────っ! 修也、ありがとっ!!」
修也の言葉に有利栖は花が咲いたような笑顔を浮かべ、勢いのまま修也に握手を求める。
──が、修也はそれを手で制すと、バイザーを被りながら口を開いた。
「……ま、その前に。
やらなきゃいけないことが、あるけどな」
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