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第10話 ──決戦
「──さァ、行きますよォッ!」
大量の怪物を侍らせた“帽子屋”は、口を三日月のように歪めるとそう叫び、シルクハットを再び振るった。
──異形の怪物が、有利栖と修也目掛け疾る。有利栖には鎌と触手が、修也には爪と牙が。空気を切り裂き襲い掛かった。
修也は爪と牙をギリギリまで引き寄せ、既のところで後方へ跳ぶことで回避する。
アスファルトの地面を穿った爪と牙はなお勢い衰えること無く修也に向かって牙を剥くが、修也はそれをダストボックスや壁を縦横無尽に飛び回ることで上手く回避していく。
一方有利栖は──その場から動かない。拝むように両手を組み、迫り来る鎌と触手をしっかりと見据え口を開いた。
「力を貸して……お願い……っ!」
目一杯の願いを込め、兎月が託してくれた純白のモンシロチョウにそう呼び掛けた有利栖。
──淡い白い光を放つモンシロチョウは、その声に応えた。
ふわりと煌めく鱗粉を落としながら宙を舞い、有利栖の眼前で2、3度はばたく。
──刹那。白く輝く鱗粉の嵐が、まるで結界の如く有利栖を中心に巻き起こった。
異形の鎌や触手はそれに触れるや否や、一瞬にして形を失い霧散してしまう──その光景に、“帽子屋”は笑みを消し僅かに目を見開いた。
その瞬間生まれた僅かな隙──それを、修也は逃さない。
爪と牙を上手く誘導し同士討ちさせることでその勢いを殺した修也は、回避した姿勢のまま銃口の狙いを“帽子屋”に定め、即座に引き金を引く。
自動拳銃が、火を吹いた。
遊低が高速で前後し、排莢口から次々と薬莢が吐き出される──その数、4発。
だが──。
「くっくっ……そんな豆鉄砲で私の獣が撃ち抜けますか……ねェ!?」
修也が引き金を引いたのと同時に、“帽子屋”は周囲に待機させていた蝙蝠の羽根を大きく開くと、全身を覆い隠すように展開した。
──その光景に、修也はニヤリと笑みを浮かべ口を開く。
「ああ、そうだな……。
普通の銃弾じゃ、どう足掻いても精霊は撃ち抜けんよ。
けどな──」
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