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第11話 ──銀の弾丸
「────ッ!? っがあ……!」
修也の放った弾丸は、“帽子屋”の纏う蝙蝠の羽根に着弾するや──いとも簡単に撃ち貫いた。
“帽子屋”が苦悶の表情を浮かべ、呻き声を上げながら膝から崩れ落ちる──弾丸は、“帽子屋”の両肩と両膝を的確に撃ち抜いていた。
「なっ……何故……っ!?」
「……銀の弾丸。古来より魔を滅ぼし怪異を退ける必殺の弾丸。
コレが撃ち抜けるモノ……それは精霊とて、例外じゃないのさ」
呻きに近い声を絞り出す“帽子屋”に、修也は涼しい顔でそう返す。
──修也が用いた弾丸は、銀を原料とし精霊に対抗できるよう特別な術を折り込んだもの。対精霊奏者用の必殺弾だ。
有利栖は、精霊の力を一切用いずに“帽子屋”を跪かせた修也に、羨望の眼差しを向けていた──というよりも、修也が精霊と共に戦っていないことに今更気付いた。
──最も、彼は生身ながら人間離れした運動能力を持っているので、無理もないが。
修也は、“帽子屋”へとゆっくり歩み寄りながら銃口の狙いをその頭部に定め、口を開く。
「……さて、“帽子屋”よ。大人しく投降してくれるんなら、これ以上の攻撃は加えない。
お前程の高位精霊奏者だ。“血翼”の秘匿情報もそれなりに持ってるんだろう? ……それと命と、引き換えだ」
静かに、だが威圧感を込めた修也のその言葉。それを受けた“帽子屋”は、跪いたままくつくつと呻き混じりのくぐもった笑い声を漏らす。
そんな“帽子屋”に修也はバイザーの奥で眉を寄せ、有利栖はこの状況でなお笑う“帽子屋”に「うわぁ……」と顔をしかめる。
──帽子屋は、勢い良く顔を上げると狂気に満ちた表情で叫び声を上げた。
「くっくっくっ……命? 命!? 命ィ!?
この私がァッ! そんなチンケなモノにィ、執着してると思うかァッ!? 人間ンンンッ!!」
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