運転代行はじめました。

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「あ、でもいい方法がありますよ。」 「一応聞きましょうか?」  彼女は両手を横にめいっぱい伸ばして、何かを掴むように手をグーにした。 「お客様の右手が私の車を握り、左手がお客様の車を握る。」 「なるほど。人間ワイヤー。アホか!」  指を揃えて左手で彼女の胸元を叩くツッコミのフリをした。 「え~、なんでですか~?」  どうやら彼女はさっきの提案で褒められると思っていたようだ。 「俺はびっくり人間ですか!白いギターがもらえるんですか!」  ケンジは叫ぶように声を荒げた。  再三のケンジの叫びで熱意が伝わったのか、やっと彼女も自分の考えを疑いはじめた。 「そんなにすごい事なの?」  まだ彼女は自分を疑いきれないみたいだ。  え~これほど言っても?ケンジは怒鳴ってみても意味がないな、と今度は、なるべく抑えて話してみた。 「想像できない?あ~、なるほど。他人事だから。だったら、マユちゃんが人間ワイヤーやっていると考えてみなさいよ。」 「え~と、マユが・・・・あはは!」  彼女が笑い出した。ケンジは驚いた。 「そんなにご機嫌なこと!?」  彼女は笑いながら言った。 「大岡裁きみた~い。」 「まあ、呑気な母さん。」
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