運転代行はじめました。

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「はい。」  女性は当たり前のテンションで答えた。 「はい、じゃないでしょ!どうすんの!車運転できる人、あなただけジャン!」  ケンジは、つい大きな声を出してしまった。  やっちまったかと焦った。  なんだか怒鳴ったみたいになったけど、彼女に嫌な思いをさせてしまったんじゃないかと心配した。  しかし、女性はいたって普通だった。 「まあね。でも、いけるんじゃないですか?」  メンタルが強い。ケンジはホッとする一方、頭を抱えた。 「あのね、よく考えて。まず、あなたが俺の車を運転して、俺の家へ行く。」 「はい。」 「そこから、あなたどうするの?」  女性はうーんと考えた。 「すいませんが、ここまで送ってもらえませんか?」  ケンジは目をぱちくりさせた。 「え?なになになに?」 「ですんで、私がお客様をご自宅までお送りした後、私たちをここまで送ってもらえませんですかね?」  ケンジは素っ頓狂な声を出した。 「えっ!俺が!?」 「もちつ、もたれつで。」 「あのね、」 「もちつ、もたれつ方式で。」 「だから!」 「あ、もしかして、車の免許を持ってないとか?」 「持ってますよ!」 「でしたら~、」  この人、なんで自分が呼ばれたのかわかってないなー、とケンジは呆れた。  なので、今度は意図して大きな声でまくし立てた。 「でしたら~、もなにも、酔っ払って運転できないから、あなたを呼んだんでしょう?飲酒運転絶対ダメ!ストップ、ドリンキングドライブ!スターダストレビューも言ってるでしょ!」  どうやら怒られても気にしない人のようだ。  シュンとするどころか、女性は微笑みを浮かべて、コブシで自分の頭をコツリと軽く叩いた。 「あちゃ~。」  暢気な女性を見て、ケンジは脱力した。
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