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「どうですか──?書類の片づけは──?」
アップルが合流し、玄関から声をかけてきた。
「だいたい出来ましたよー!」
リビングからバイトのパインが元気よく答える。
「本当──?」
アップルは素早くリビングにやってくると、早速、指摘を始めた。
「これはね、年度毎に並べてください、いいですか?」
「あ、わかりましたー!」パインは屈託なく答える。
「ほらみろ!」横にいるマーロンが小声でパインに言った。
「・・・それにしても社長・・・リビングがオフィスの部屋、キッチンが給湯室、客間が商談室、納戸が倉庫に・・・チェリー社長のプライベートスペースは狭いベッドルームだけになっちゃいましたね・・・本当にいいんですか?」
バナーナは心配そうにバルコニーに佇むチェリーに声をかけた。
「う、うん・・・」
夕日に染まったチェリーの赤い頬に一滴の涙が伝っていた・・・
「えっ?!チェリー社長!大丈夫ですか?!!」
驚いたバナーナはチェリーに駆け寄る。
チェリーは涙をぬぐいつつ言った。
「今、下の通りを見ていたらね・・・浴衣姿の女の子と男の子が歩いていってね・・・そうか・・・今日は、この界隈の夏祭りの日だったと思いだしてね・・・今年の夏は営業や資金繰りに奔走してて・・・どこにも遊びに行けなかったなと思ったら・・・急に涙が・・・ね」
そう言うチェリーの目にまた涙がブワッと溢れてきた。
「わっ!わかりました!チェリー社長!・・・今すぐ皆で夏祭り見に行きましょう!!」
バナーナが大急ぎで提案する。
「さんせーい!!」
バイトのパインとマーロンが声を揃える。
「・・・仕方ないわね──、じゃあ片づけの続きは明日の月曜ね?」
アップルも苦笑いの表情。
「本当?・・・やったー!!」
ブロークン・チェリーは一気に大喜びし、バルコニーで飛び上がった。
夏の終わり、まだまだ暑い夕刻の日曜の出来事である────
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