小宇坂さん

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僕の目的は、小旅行だ。サイクリングをしながら旅をするという小説を読んで、この小説みたいにものすごく遠くじゃなくて、ほんの少し遠くでいいからどこかへ行きたい、と思い立ったのがきっかけだった。丁度夏休みに入ったばかりでそれなりに浮かれていた僕は、すぐさま計画を立てて今日を迎えた。 ちなみにサイクリングをしながら旅をする小説がきっかけなのに何でバスかというと、理由は簡単、僕に全くと言っていいほど体力がないからだ。というか、文化部でほとんど外にも出ない男子に体力を求めないで欲しい。男子だからって、運動が得意な奴ばっかりじゃないんだ。 気が付けば、窓の向こうには森が広がっていた。いつの間に降りたのか会社員らしき人はもう居なくて、まるでバスが丸ごと僕の貸切になったみたいに思える。 持ってきていた鞄から白いシンプルなイヤホンとスマホを取り出して、某音楽アプリを起動する。イヤホンを挿して、耳に付けてからお気に入りの曲を集めたプレイリストを再生した。流れてくるのは夏らしい爽やかなメロディ。 木々の隙間から覗く雲ひとつない青空を一度見上げて、僕はシートに体を預けて瞼を閉じた。 二時間もかかるし、今日は早起きしたからいつもより睡眠時間が少ないんだ。一時間ほど、眠ってしまってもいいだろう。 すぐに眠気がやってきて、僕は心地よい揺れを感じながらすうと意識を夢へと飛ばした。
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