小宇坂さん

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「……。…えっ、うわぁあああああ?!?!」 「わっ?! びっくりしたなあ、もう。こんにちは、少年」 少年じゃなくて、皆見(みなみ)です。 そっと訂正すると、その女性は「そっかそっか、ごめんね? じゃあ改めて、こんにちは、皆見クン」とからからと笑いながらそう言った。 不審げに距離を取る僕に、怪しいものじゃないよーと呑気な笑みを浮かべながら彼女は"小宇坂(こうさか)"と名乗った。奥の方にぽつんとひとつ建つ家を指差して、あそこに住んでるんだ、と小宇坂さんは教えてくれた。ここの向日葵畑は、私と親族のみんなで管理してるんだよ、とも。 それに僕はびっくりして、質問攻めにして…はっと我に返ったときには至近距離に整った小宇坂さんの顔があって、また情けない悲鳴を上げてしまった。そんな僕に、小宇坂さんは、またからからと快活に笑う。 気まずくなって、距離をとる。離れてみると、真っ黄色な向日葵畑にひとつ、真っ白で可憐な花が、負けず劣らずの満開の笑顔で立っている。時折風が吹いて、小宇坂さんのボブぐらいの髪とスカートを揺らした。 …ああ、綺麗だなあ。素直にそう思った。 彼女の纏う色は異質なのに、何故か不思議なほど、向日葵畑の中にいることに違和感が無くて。逆に、そこに彼女がいることで、抜けていたピースが嵌ったみたいな感覚を覚えた。
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