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小宇坂さんがくるりと一回転して、僕はふわりと舞うスカートを反射的に目で追ってしまう。慌てて目を逸らすと、「若いねえ」と微笑まれた。
ああもう、恥ずかしい。ぱちぱちと、炭酸の泡が弾けるみたいに、胸の中で"何か"が音を立てた。この気持ちが、感覚が、どんなものなのかもどんな名前なのかも、全くわからないけど、…嫌いじゃないし、なかなか悪くない。
僕はスマホのカメラを起動して、微笑む小宇坂さんと美しい向日葵畑をそこに写し取った。それは、酷く心が震える景色だった。
***
「えっと、僕、そろそろ帰らなきゃいけなくて…色々と、ありがとうございました。何か、お礼を……」
「いいよいいよ、そんなにかしこまらなくて。でも…もしお礼っていうんなら、来年もここに来て欲しいかな」
「来年、も?」
「うん。頑張って育てた向日葵が、誰にも見てもらえずに萎れて枯れてくのは、やっぱり寂しいからさ」
「わかりました。絶対、絶対来ます!」
「おお、元気だねえ。ありがと。──約束、だよ。私もまた、ここで待ってるから」
「はい。……さようなら」
「うん、さよなら。またね、皆見クン!」
***
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