善意

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善意

 宇宙のある星からの使者がやって来て地球の首脳たちとの会見を望んだ。  宇宙人の代表者は、地球人からすればグロテスクで正視しているのが苦しいような容貌をしていた。だがその彼らが、実に流暢に地球の言語を話した。 「はじめまして。我々は、あなた方地球人とこうして会えたことを心から喜びます」  地球側の代表者もまた、 「私たちも、あなた方と交流を持てたことを嬉しく思います。これから長くお付き合いしたいものです」  地球側からすれば、考えられないような遠くからやって来た宇宙の来訪者に教えを請うことは、実に素晴らしい発展に寄与すると考えるのは当然のことだったろう。  だが、宇宙人代表が次に発したことばは、意外なものだった。 「地球の皆さん、我々もあなた方にいろいろな優れた技術などを伝授したい気持ちがあります。ですがそうもしていられないのです。 我々の分析では地球はあと5年で滅亡します。そしてその滅亡の前段階がすでに始まっているのです。我々は、それを地球人諸君に伝え、対応のために力を貸したいと考えて、今日ここに来たのです」  宇宙人のその話が終わると、世界中が驚愕し、そして、地球より遙かに進んだ文明を持つ宇宙人に救ってもらおうと言うことになった。 「地球の皆さん。賢明な判断です」  すると宇宙人代表団はすぐさま宇宙船に乗り込み、空に舞い上がった。  そして突然彼らの宇宙船から怪光線が幾筋も発射され、それを受けた人々は無差別に消失してしまった。地球の人口はアッという間に3分の1になった。地球人は抵抗する間もなかった。  初めての、地球外生命体との友好な接触に、期待に胸を膨らませていた地球の人々は、呆然とし、怒りを露わにし、宇宙人を罵った。  宇宙人は、それからこう言った。 「地球人類は増え過ぎましたので、減らしました。自らの手で人口を減らすのは性質上、出来ないことだったでしょう。ですから私たち第三者がやりました。恨むなら私たちを。それでも地球は救われたのだと言うことをお忘れなく」  宇宙船は、そのままどこへともなく飛び去った。
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