不死の時代

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不死の時代

 テレビにアナウンサーが映っている。世界政府で決議された内容を伝えているようだ。 「人類の不死という時代をどう乗り切っていくかと云う問題について各国代表で議論されていましたが、現状、一定の快適さを保てる地球上の人口としては、当面、現在の人口の二倍までが限界だろう、という結論に達した模様です。そのため、その上限数について各国で割り当てが行われますが、国家間での『上限数の売買』も容認する模様です」  すでに不死となっている人々の中では、このニュースをどうでもいいと思っている人が多かった。 「人口の上限とか、人口密度の快適さより、この苦しさをどうにかしてもらいたいのに」  そうなのだ。人は、あくまでも『死ななくなった』だけであり、病気やケガから来るような『苦しさ』は依然として感じるのだった。 「ああ。苦しさだけが続くなんて……それを先にどうにかしてくれ」  テレビニュースが終わると、元気そうな血色のいい女性が小さな瓶を持って画面に映り、ニッコリ微笑んで、新製品の鎮痛剤と防腐剤のCMが始まった。
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