婚約

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隼也さんは私の右手を掴んで院長室に乗り込んだ。 「どうした?隼也」 心臓血管外科の医局長の相馬先生とソファを囲み、話をしていた。 「親父…俺…瑞希と結婚したい」 「一ノ瀬君と結婚?」 「元々…彼女の姉と俺は許婚だった…でも・・・彩芽が死んで、その許婚の話は立ち消えてしまったが…俺は妹の瑞希と結婚するコトにした」 「…一ノ瀬君はそれでいいのか?」 「…まぁ・・・」 亡くなった姉の身代わりだと思いながらも… 惚れた手前、彼との結婚を拒みきれなかった。 「いい話ですね…」 「いい話だか…年の差が…」 「年の差?」 相馬先生は神妙に私を見た。 「たかが…十三歳だ…」 「まぁ、それぐらいなら…大丈夫ですよ。院長」 「私よりも先に…一ノ瀬社長夫妻に言いなさい…隼也」 「それもそうだな…邪魔したな…親父。ほら、行くぞ…瑞希」 隼也さんは強引に連れて行き、院長室から出た。 「何だか凄く強引ですね…」 「…親父には報告した。お前の方から一ノ瀬社長夫妻に言っておいてくれ」 彼は私の言葉を全然訊いていない。 「あ、はい…」 何でそんなに結婚を急ぐのか意味が分からない。 嬉しいけど、思いは複雑。 私は彼に問いかけた。 「どうしてそんなに急ぐんですか?」 「お前がモテるからいや…親父も歳だし…いつ死ぬか分からない。孫の一人ぐらい見せておかないとな…死んだ時、化けて出られそうで怖いだろ?それに俺の子供にもこの病院を継いで貰いたい…」 「…子供が欲しいなら…他に幾らでも…」 「・・・この病院、儲かってると思ってる?」 「え、あ…」 「赤字にはなっていないものの黒字でもない…」 「隼也さんは…この辺りの地主であるお父さんの後ろ盾が欲しいのね…」 「そう言うコトだ・・・」 「だから…私なんだ…」 唯の金づるか…
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