プロローグ

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小児医局に戻ると同僚の看護師・村上梓(ムラカミアズサ)が私の顔をジッと見て来た。 「一ノ瀬さん、何だか凄く顔が赤いわよ」 「え、あ・・・そう?」 「一ノ瀬さん…303号室の太一君のバイタルチェックして来て」 先輩看護師の粟田真矢子(アワダマヤコ)さんに言われた。 「あ、はい…いってきます」 私の担当患者の太一君のバイタルをチェックしに、再び医局を出ようとすると 奇妙な会話が聞こえた。 「…昨日搬送されて来たバイク事故の少年…今朝、容態が急変して亡くなったらしいわよ…」 「プリンスの執刀だっけ…でも・・・かなり危ない状態で運ばれて来たんでしょ?」 「どっちしても…助からなかったのかもしれないわね…」 プリンスは隼也さんのあだ名。 隼也さんが私を呼び出し、迫ったのは… 若く将来有望な患者を亡くしたショックを紛らす為だったのかもしれない。
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