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来なければよかった
大学を卒業して四年、私以外みんな輝いていた。
「若林さん?どうしたの就活中」
みんながお洒落な衣装に身を包む中、私は白いブラウスを首元までボタンを掛け、濃紺の飾り気のないスーツに身を包んでいた。
「婚約者が私にはこういうのしか似合わないっていうから」
「ええええ!若林さん結婚するの?いつ?」
「あの・・・来月・・・」
「おめでとう。でも若林さん学生時代はもっと明るい色を着てたよね?可愛い感じのとか似合ってたよ?」
「え?」
私のこと覚えてたの?
「前はゆるいウェーブの暗めの茶髪だったでしょ?お人形みたいで可愛かったから覚えてたもん、どうして黒髪にしたの?黒髪も綺麗だけど髪は下ろした方がいいかも」
予想もしない言葉だった。
いつの間にか私の世界には孝さんだけで、孝さんの言葉だけがすべてだった。
急に怖くなった。
「あの・・・遅くなると叱られるからもう帰ります」
「ええええ!誰に?両親じゃないよね?」
「婚約者に・・・」
みんなが引いていくのを感じたが、これ以上話をすると疑念が湧きそうで参加費を払うと急いで店を出た。
どうしよう
孝さんに疑問を持っちゃダメなのに
孝さんの言うことは正しいのに
混乱する頭で駅に急いだ
「若林さん」
声を掛けられて驚いて振り向くと
川原くんが立っていた
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