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30日目
どうやら寝てしまっていたらしく、教室が月明かりに照らされていた。
誰もいない。みんな僕を無視して帰ったのだろう。
起こしてくれるような人は初めからいない。
立ち上がった。すると、僕以外の、誰かが窓に映っていた。
「優一くん」
糸電話のようなこもった声ではない、透き通った声。
窓に見た三上さんがいた。だいぶやせ細っていたが、確かに三上さんだ。
「三上さん……」
「おかしくなったんだってね。ずっと窓ばかり見てるって噂だよ?」
「そうだね……」
「そこにはもういないよ」
「うん……」
「泣いてるの?」
「うん……」
「ちゃんと見てほしいな」
「うん……」
「私はここにいる」
手を伸ばす。触れたいと願った三上さんの手が絡み合った。暖かかった。
「会いたかった」
僕らは並んで窓に映っていた。
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