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同時にプッと吹き出した瑛太と九太郎は顔を見合わせると大声で笑った。茜色から藍色へと空が移り変わり緩やかに暮れていく町の景色の中で二人の明るい笑い声が溢れている。
「頑張ろうな。九太郎。」
「うん。頑張ろうね!にいちゃん。」
夢を叶えるものは何なのか。
怪しい青年は詳しく説明をしなかった。
だがこれから心の種が育ち、様々な夢が花ひらくごとに二人は大切な何かを知っていくのではないのだろうか。
「あ、そういえば九太郎。なんであの時
『火事だ!』って叫んだんだ?」
ふと思い出した瑛太が隣に座る九太郎の少しだけ大人を匂わせる横顔を見た。
「ああ、にいちゃん。アレはね、街中で『誰かに襲われそうな時は【助けて!】じゃなくて【火事だ!】って言う方がいいって。そうするとお家の人達はびっくりして外に出てくるらしいんだ。漫画の本で読んだ。」
そう言って黄色い帽子の下から九太郎は悪戯な笑顔をみせる。
「おいおい!お前、悪だなぁ!」
「にいちゃんだって。悪の素質あるよ。山本かなりビビッてたぜ。」
ケラケラ笑いながら二人は腕を空に伸ばし小さな硬い拳を重ねる。
ガチャガチャやり放題。お菓子食べ放題。
街は全てオモチャ屋さん。宿題廃止。
素晴らしき【世界征服の夢】を叶える為、
力の限り頑張ろうと瑛太と九太郎は再び熱く誓い合うのであった。
おわり
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