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「だ、大丈夫か。九太郎」
「うん。にいちゃん。」
むっくり上半身を起こした瑛太が隣で大の字で横たわる九太郎を気遣った。
脱げた黄色い通学帽はアスファルトに転がっている。
「あ!無い!帽子!」
頭を忙しなく両手でまさぐる九太郎も身体を起こし慌てて通学帽を掴んだ。母親が切りすぎたぱっつん前髪を隠したい九太郎は再び帽子を深く被ると間に合ったと安堵のため息をつく。
「坊主ら。大丈夫か?」
和服の男性は膝を曲げ二人に笑顔を向け手を伸ばした。
「ありがとうございます。」
思わず瑛太はこの間他界した祖父を思い出し目をうるわせながら手を取り礼をいう。
「ああ。割れちゃったな。待ってろ今、ビニール袋持って来てやるからな。」
二人の方を見た男性は思いついた様にいそいそと自宅に小走りで戻って行く。
その背中を見送った瑛太は先程の和服の男性の視線を追いおもむろに振り返った。
「あ!!」
瑛太は驚きの声をあげた。
尻をつけた九太郎の隣で植木鉢が粉々に割れている。すっかり変わり果てた姿に二人の顔がサァッと青ざめていく。
「わ...割れちゃった。」
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