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「あれ?なんだコレ。」
シクシクとべそをかきつづける九太郎の隣に座った瑛太が赤茶色の陶器欠片の下に隠れた土の中に何かを見つけた。黒味の強い土の間から顔を僅かに覗かせる黄色いガラス質の物体が色の濃くした夕陽に一瞬キラリと反射している。
瑛太はその不思議な美しさに導かれる様にそっと右手を伸ばした。
「......九太郎。見てみろよ!」
瑛太の興奮に震える声に反応した九太郎はゆっくりと顔を上げる。
「にいちゃん......コレは?」
九太郎のすっかり赤くなった瞳に写ったのは瑛太の小さな掌の上に乗る【心】と白い字が刻まれた黄金色に輝く球体。
硬い表皮に守られた球体の中にはゼリー状の物質がゆらゆら生き物の様に蠢いている。
「九太郎。もしかしたら......コレが【夢が叶う花のもと】なのかもしれない。」
瑛太と九太郎は今は割れてしまった鉢植えを手渡したあの怪しい青年と出会った時の事を思い出した。
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