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......1時間前
「にいちゃん。山本に僕達一生嫌な目に遭わされるのかなぁ。」
小学校の裏手にある公園の隅に小さな鳥居がある。鳥居の奥には丸い形をした石を祀る様にこじんまりとした賽銭箱が石の前におかれていた。
【漬け物石】とあだ名されるこのつるりとした何の変哲もない石は【未来と繋ぐアイテム】と小学生の間では噂されている。
赤い色が剥げ落ちる賽銭箱を覗きこむ九太郎のかたわらで瑛太は漬け物石を撫でブツブツと一生懸命に願い事を呟いていた。
「はあ。未来であんな奴コテンパンにやっつけたいなあ。だけど俺は筋肉も無くてひょろひょろだから相手にならない。全く悔しいよ。」
「うん。僕だって山本をギャフンといわしたいよ!」
瑛太と九太郎はハアーッと大きく息を吐きその場で二人共頭をかかえてしゃがみこんだ。
サラサラと風が公園の葉桜を揺らした。心地よい風の音は初夏を告げるメロディの様に優しく耳に囁き何処からかレモンに近い柑橘系の香りが漂ってくる。
人の気配が排除された閉鎖された空間の中で
自然の繊細なパーツの演舞を通して開通した奇跡。
二人の前に静かに異次元の扉が開いた。
「もしもし。そこのお二人さん。」
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