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背後からの呼びかけに瑛太と九太郎は二人同時に振り返った。
「に、にいちゃん変な人がいるよ!」
先程くぐってきた鳥居の下に若い男が植木鉢を一つ両手で抱えて立っている。全身銀色のタイツ姿でなければイケメンの部類に入るサラサラのボブヘアーの青年は白い歯が印象的な爽やかな笑顔を二人に向けていた。
「【夢を叶える花を咲かすもと】を君たちにあげるよ。カッコよくなりたい、お金持ちになりたい、モテたい。何でもいい。君達が気持ちを込めて頑張ると頑張るだけ花が育っていくんだよ。」
「なんだそれ!怪しすぎるぞ!言っとくけど僕達お金なんてないからな!」
両手を広げ九太郎を庇いながら興奮する瑛太に向かい怪しい青年は両掌を見せながら左右に振り困った笑顔で説明を続ける。
「お金なんていらないよ。未来ではみんな花を咲かす事を諦めてしまってとても寂しくて暗くて大変な事になってしまっているんだ。頼むよ君達。力を貸してくれ!」
青年はそう言うとポカンと口を空いたままの二人に見せつけるように植木鉢をドスンと音を立てて自分の足元に置いた。
「頼むよ!沢山素敵な花を咲かせてくれ!」
「ええ!どうする!九太郎!」
「す、すげ〜よ!にいちゃん!」
瑛太と九太郎は顔を見合わせた後すぐに鳥居の下に目線を戻したが謎の青年は煙の様に一瞬で姿を消し去っていた。
【夢を叶える花を咲かすもと】を二人の前に託す様に残して。
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