黒猫テツ

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 人間の時と一緒で,テツは納骨されました。合同慰霊碑に入ったので,お友達もいっぱいいると思います(ネコさんだけじゃなくワンちゃんも)。 「テツ,お友達いっぱいおるから淋しくないな。また来るね」  初めてお墓参りした日,私はテツにそう言いました。  でも,ここ数年はずっとお墓参りに行けていません。私が病気になって入院したり,家族が立て続けに三人も亡くなったりしたためです。  テツは本当に淋しくないのかな? 私は今でも時々心配になります。  でもきっと,テツは私達のことを恨んではいないと思います。だって,テツが虹の橋を渡った年の十月に私が手術を受けた時,テツは私を全身麻酔から起こしてくれたから。  麻酔から覚める時,確かにテツの声が聞こえました。「お姉ちゃん,もう大丈夫だニャ。起きてニャ」って。  テツはとってもいい子だったから。優しくていい子だったから。だから私を起こしてくれたんよね? テッちゃん。  ――そして今,私はこの文章を書きながら,テツのことを思い出してまた泣いています。                          終わり。
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