花火

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「まだついてたのか、それ」  黒い粒を見下ろしながら、彼は言った。 「みたいだね。忘れてた」  しばらく沈黙が続いた。  彼が何を考えていたのか、何を思っていたのか、私にはわからない。  でも、次に口を開いたとき、予想もしていなかった言葉が彼の口から飛び出した。 「花火、見に行って来いよ」 「え……」 「この時間にここにいるってことは、祭りも行かないつもりなんだろ?でも、花火は見てこい。まだ、間に合うから」  時間がない、というように早口で言う。
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