とりあえず生きてくわ

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 それは本当に日常の中に落ちて来た墨のようなもの。  ボタリと広がった闇色の波紋はあっという間に私の心を真っ暗に変えた。 「行ってきます~! あ、ナオ、今日残業ある?」 「あー、派遣さんの歓迎会あるんだよね。ごめん、言い忘れてたわ」 「了解、じゃあご飯いらないね」 「うん、いらない、ごめんね! そうだ、千夏! 今日は鍵忘れないでよ。オレ遅いんだし」  苦笑しながら玄関まで見送りに来てくれたナオ。  時々鍵を忘れてしまう私に確認をして。  それからいつものいってらっしゃいのキスで見送ってくれる。 「暑いから気をつけてね~!!」 「ナオもね~!!」  そんな風に笑って見送られるのが日課になってた3年目の同棲。  同じ路線で隣の駅同士の会社に通ってるのに、私の会社の方が30分早く始まって。  ナオの会社の方が30分遅く終わる。  だから行きは別々。  帰りは時々はそのまま待ち合わせしてご飯食べたり、映画やショッピングに出かけたり。  極々普通のカップル、私が5つも年上だということを覗いては。
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