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また、暑い夏がやってきた。
蝉の鳴く声、照り返す日差し、プール帰りの少年達。
年に一回訪れるここも、小さな頃とは違いすっかり人も減ってしまった。
高校生最後の盆帰り。
既に亡くなった祖父母のお参りも兼ねて、毎年この日は親戚一同が集まっている。
そして僕は、毎年彼女のもとを訪れている。
「ただいま、元気だった?」
__数年前。
「ねぇね、君はなんていうお名前なの?」
「えっと...たける、です...」
「そっか!いいお名前だね。よろしくたける!」
毎年恒例の集まりの為に里に訪れたとき、唐突に出会った女の子。
名前を"ひまわり"というらしい。
白いワンピースを着た彼女は鬱蒼と草木の茂る山にはあまりにも不自然だった。
両親や親戚が色々な準備をしている中、暇だった僕は同い歳の小学生数人と山に遊びに行っていた。
「ひとり、なの?」
「うん、わたしここらへん詳しいんだ!」
「女の子ひとりなんて珍しいね。」
「あー!それだんじょさべつって言うんだよー!いけないんだよ、知ってる?」
活発な女の子で山に一人でいるような子だったので、最初は警戒をしていた。
ただ自分が迷ってしまったこともあり、その時は助けて貰ったのだ。
「ここまでくれば大丈夫だよ!」
「ありがと...ひまわりは一緒に来ないの?」
親戚の集まりに彼女を誘ったが断わられた。
助けてくれたお礼をしたかったし、何より彼女への興味も沸いたのだが...
「まだ用事がのこってるんだ、せっかくなのにごめんね?」
そう言って手を振りながら山の奥へと消えていった。
それからというもの。
それから毎年、惹き付けられるように一人で山に入っては彼女を見つけ、他愛ない話をしながら山を歩いたりしていた。
「何で毎年ひまわりはここにいるの?」
「ふふっ内緒だよ!」
毎年のように聞いた山にいる理由も、彼女はずっと教えてくれなかった。
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