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耳を疑った。
彼女が死んでいる?信じられない?否信じたく無かった。
「そんな、じゃあ今まで幽霊と会話してたって言うのかよ。」
その質問に長い沈黙を費やした後、傷付けないように、言葉を選ぶように父は答えにならない答えを言う。
「俺がまだ小学生の時、その山では大きな土砂崩れが起こったんだ。その年は記録的な大雨で、後に豪雨災害として大きく報道された。」
父はその被害の大きさを噛み締めるように語った。
どれくらいの範囲だったのか。どれだけの人が被害に会ったのか。
その被害者の中に、彼女の名前があったことも。
「それからその山で相次いで子供が行方不明になる事件が多発しているんだ。その大半が"発見"された。中には保護された子も居るが数える程度だった。そしてその子達は口を揃えて、白いワンピースの女の子を見た、という。」
白いワンピース、という言葉に反応し、指先が微かに動く。何故だか呼吸が荒くなる。信じたくない現実がすぐそこに迫ってくる感覚に吐気がする。
聞きたくない、だが聞かなければならない。焦る気持ちと背中に伝う冷や汗を無視しながら、耳を傾けた。
「その様子だと、お前も同じなんだな。」
無言の肯定。その雰囲気を感じとった彼らはまた、騒ぎ出した。
父はそれを宥めながら、こう続けた。
「察しの通り、彼女の仕業だと言われている。子供だけが狙われるということもあり、呪いと呼ばれている。だけど、別に俺はそれを鵜呑みにしている訳じゃない。少し案がある。」
その案について言及することはなく、「明日の夕方に俺と一緒に来い」とだけ告げられ、その日は終わった。
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