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それからというもの。
こうして僕は毎年墓参りに来るようになっていた。
父曰く「高校卒業まで墓参りをしていたから、お前もそうすれば死ぬことはない筈だ。」とのことだった。
「まぁ、故人に対して元気かどうか聞くなんておかしいかな...」
一人苦笑しながら、買ってきた向日葵を供える。
辺りに咲いた向日葵と同じではあるが、心做しか買ってきたこれは元気そうに見えた。
「今年受験生だなんて、信じらんないよなぁ。大学も一応決まってるけど、イマイチよく分かんないや。」
誰に届く訳でもない言葉は、夏の暑さの中に溶けて無くなる。虚しさを孕んだ溜息は、蝋燭の火を少しばかり揺らした。
「父さんの言い方も酷いよな、墓参りに行けば死なないだろって、いくら何でも。」
解釈なんて人によりけりで違うだろ、と父なら反論するだろうなと考えながら、線香の包みを綺麗に剥がす。
「君のことはさ、確かに実際に会ったことないし、生きていれば実年齢的に親子くらい離れてる訳だけど、それでも君に恋しちゃったんだ。なんて、顔見て言えないけど...性格的にも、実際にも。」
暗くなる気持ちを抑えつつ、数珠を持ち、手を合わせて、目を閉じながら呟く。
「でもきっと、大層美人さんなんだろなって。」
目を開けてゴミを片付け、帰る支度をする。
「願わくば、君ともっと話がしたかった。普通にあって、普通にどこか遊びに行って、産まれた時代が同じならそんなことも出来たのかもね。」
生温い風が少し吹き、線香の煙を運んで行く。
「大人になれば忙しくて中々これないかもしれない。でも、できるだけ毎年来るようにはする。」
「だからさ、」
僕のこと、呪ったりしないでね?
冗談にしてはちょっと度が過ぎるが、悲しい感じにはどうしてもさせたくなかった。さっきまで酷いと言った父の言葉の裏にも、こんな意味があったのかもしれない。
「似たもの同士ね。私の分まで幸せになって...」
ふと、そんな声が聞こえた気がする。
向日葵の花は、太陽へと真っ直ぐ伸びていた。
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