二三子ばぁと私

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 もうすぐ四〇歳。二〇年この道を突っ走ってきた。母が亡くなり一時閉めていた母の美容院を次いで、私は今そこで毎日を過ごしている。まだまだきれいな手。もっと荒れてごわごわになって、ごつごつした手にならないと。  心の声が伝わることを忘れない。いつ聞かれても恥ずかしくないように。 「この人の幸せの一助となりますように」  この二〇年間、ずっと思いながら仕事をしてきた。そんな自分が好きだ。  私は才能があるなんて思ったことは一度もない。ただ、誰よりも美容という仕事を通じて目の前の人を幸せにしようと願っていると自負している。  二三子ばぁが私にかけたおまじない。もっと荒れてごわごわになって、ごつごつした手になったら一人前。  まだまだきれいな手。  見ててね二三子ばぁ。  私はまだまだやれる。
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