義眼師~光を灯す~

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義眼師~光を灯す~

 私の目は生まれつき視力を持っていない。先天性の何とかという病気で、この世に生れ落ちたときから光というものの存在を知らないのだ。  私の世界には黒と明るめの黒と明るい黒があるだけで、色というものが存在しない。目に映るものを色として表現するならば、私の世界は先ほどの三色で作り上げられている。 色を明るい暗い以外の表現の仕方があるなんて到底考えられない。  私のいる世界は、たいていが真っ黒から明るめ寄りの黒の世界だ。その中に時々明るい黒が出現する。光が強く放たれてる時だと思う。  そもそも私が見ている世界の色が黒というのにも疑問が浮かぶ。他の色を知らないため、私が見ている色が黒なのかさえわからないのだ。     早四〇年の歳月が経とうとしていたが、恵まれたことに私はその間何不自由なく生きてこられたと思っている。
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