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「緊張して来ました……」
太郎がベースを持った手を何回も拭いていた。手汗が酷いらしい。
だが太郎以外は皆、どこか余裕といった表情をしている。
潤は前のバンドの演奏を舞台の袖から見ているし、雄也はギターをじっと見たまま涼しい顔をしている。亮に至ってはスティックをくるくるペン回しみたいに回している。
「太郎、緊張するのもいいけどガチガチにならない様にね」
「はい……。何かお腹の調子が……」
「気のせいだ」
雄也が他人の体の事なのに言い切った。
「そうそう、どうせライブするなら自分の好きにしちゃいなょ」
亮がスティックを上に投げてキャッチした。完全に遊びモードだ。
『ありがとうございました!』
マイクで大きく響いた声がした。
割れんばかりの拍手が起きて幕が降りる。
「さて、行きますか!」
潤がメンバーを見渡して言った。
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