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「――卒業旅行ってどこがえぇと思う?」
「は?」
突然の耕太の質問に雄也は冷めた反応をした。
「じゃから、卒業旅行じゃ。雄也も行くじゃろ?」
「行かない」
「何でじゃ!?一生の思い出じゃぞ?」
耕太がテーブルを叩く。
「何でも、だ!
んなの行ってられるか……。卒業したら俺はすぐにでもアメリカ行くんだよ」
「アメリカじゃと?初耳じゃ……。だから就職も受験もしなかったんか?」
雄也は口を滑らせた事を後悔した。
「言うなよ、誰にも」
「何でじゃ?」
「何でも。理由なんかねぇよ」
言って雄也は舌打ちした。
「何じゃ、油臭いのぉ」
「それを言うなら水臭い」
訂正して雄也は言葉を続けた。
「とにかく、そんだけならもう帰れ」
雄也が帰そうとした時。
「仕方ないのぉ。あ、それともう一つ。卒業前夜祭ってのがあるんじゃが、それでアコースティックライブせんか?伊知郎がコンガでパーカッションするからって言っとった」
「アコースティックライブ………上等だ。最後の日本でのライブには持ってこいだな。卒業アコースティックライブ」
雄也が笑みを浮かべた。
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