卒業ライブ

10/30
前へ
/716ページ
次へ
『アコースティックライブ?』 受話器から潤の声がした。 「あぁ……。ギターとコンガとボーカルの簡単なヤツだ」 インターネットで色々と調べながら雄也が言う。 『アコースティックかぁ……。そういうのもいいね。で、それが最後の日本でのライブと?』 「あぁ……。お前と初めてライブやって、太朗や亮とバンド組んで、アルバムも作って、でも転校してこっち来た。 それで、またバンド組んでライブもして太朗が抜けて今度はアコースティックライブ………。お前に誘われなかったら、今の俺はねぇ」 言って雄也はパソコンから目を離した。 『雄也にそんな事言われるなんてちょっと感動するね』 「好きに捉えろ。そんで、お前に頼みあるんだ……。いいか?」 『何でもどうぞ』 「じゃあ……」 一旦、言葉を切り。雄也は続けた。 「じゃあ……アメリカで、誰でも参加出来るギターとかのフェスティバルみたいの調べて教えてくれねぇか?3月から来年の12月まで」 『はいよ、じゃあ調べたら詳細書類と一緒に送るよ。アメリカ行ってそういうの回ってみるの?面白そうだね。俺も時間縫って見に行こうかな』 楽しそうな潤の声。 「お前は仕事しろ」 『こないださ、秘書にも言われた』 悪戯っこの様な屈託のない声に雄也も口元を歪めた。 「とりあえず、頼んだ」 『任せといて♪』 「恩に着る。じゃあな」 言って雄也は少し間を空けて電話を切った。
/716ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3953人が本棚に入れています
本棚に追加