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弟が座るベンチから離れた所で女子高生らしき三人がくすくす笑いながら写真を撮っている。
男子高校生がベンチに座る姿なんて撮影して面白いのだろうか。
渉はあれで意外とモテるのかな、だから街で見つけたイケメンって感じで撮影されたのかな、なんて事を思ったのは一回目までだ。
同じメンツが二度三度と時間を置いて現れれば大体察しがついて来る。
あたしははらわたが煮えくり返ったらしい。
らしいと言うのは気が付いた時には目の前で三人が泣きべそをかいていたからだ。あたしは何か彼女達に言ったのかもしれない。
この事実を伝えたら弟はどんな風に思うだろうか。
告白が罰ゲームだった事や、デートにやってきて騙されているとも知らず延々待ち続ける姿を笑われていた事……。
あの優しい子ならそうかと笑って終わりだろう。そう言うトコがある子だ。どうせ今回のデートも自分が楽しむ事なんてろくに考えず相手を楽しませる為だけに組み立てているに違いない。
あたしへの気持ちを振り切る為に本気で好きでもない相手を好きになろうとしたに違いない。
この胸にずんと押しかかる重苦しさと渦巻く狂おしい痛みはただでさえ荒くなっていたあたしの息をさらに苦しめた。
そんなだから、馬鹿な考えを起こしてしまったんだと思う……。
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