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食事代を全額払おうとすると、あたしは対等が良いなと財布を出し始めた。カッコつけさせてとお願いして我慢してもらう。
さすがに今から高校生が入れるデートスポットなんてない。だからまだ明るい通りをウィンドーショッピングしながら歩いた。
デートスポットって何のためにあるのだろう。心から愛おしい人と歩く事がこんなに楽しくて、その瞳が向けられる事がこんなに嬉しいのに映画やら水族館やら彼女以外を眺める暇なんて一体どこにあるって言うのだ。
表情の一つ一つ、仕草のなにもかも、言葉の一言一句が胸を温める。何もかもが切なくてのぼせそうになる。ああ、恋ってこう言うものなのだろうか。
僕はこれほどまでに自分を押さえつけていたのかもしれない。そしてこれほどまでにこの人は自分の魅力を隠していたのだろう。
うっとりとする時間は永遠の様なのに思いもよらぬ程早く過ぎていて、空の暗さに驚いたりする。
僕たちはデートが始まったみなと公園に戻っていた。
ぴったり身体を寄せて座る恋人と共に僕は暗くなった港を見つめていた。
伝わる体温に、相手の命の存在に意味も無く胸がときめく。触れている所から彼女の体が呼吸に合わせて動くのがわかる。
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