身支度

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 告白されたのは初めてだ。  人を好きになった事はあるけれどこんな風な気持ちを向けられたことは無かったから、自分を変える機会にでもなればと思って、僕はOKをした。  まる三日悩んでの回答だった。  彼女はとても喜んでくれて、そして約束した初めてのデートがなぜか夏休み最後の日だった。  夏の間デートが一回ってのは不思議に思ったけど他の友達や親戚との兼ね合いがあるのかもしれない。  それでも僕は好意を寄せてくれた相手に喜んでもらう為に綿密に計画を立て、一緒に居て恥をかかせない為に服を選ぶ。それが楽しい事なのかそうでないのか分からないけれど、僕は胸に小さな痛みを抱えながら素敵な時間を過ごす下準備を重ねてこの日を迎えたんだ。  興味本位からか時々僕の様子を覗きに来る事があった姉ちゃんが、パーカーにハーフパンツと言う恰好で現れ、いつもの様にだらしない仕草で言う。  正直な所会わずに出発したかった。 「もう出かけるの? 早くない? 」 「相手を待たせたくないし、花でも買ってこうかなって」  すると姉ちゃんは呆れたように僕を見つめた。 「あんたねぇ、どんだけ待つつもりよ。大体花屋なんてまだ開いてないでしょ。ってかデートに花って、昭和か! 」
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