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弟が貰われてきた時のあたしは4歳。渉は人見知りが無くてすぐに懐いてくれた。
小さなあたしはお姉ちゃんになった事が嬉しくて、世話を焼いたり一緒に遊んだりするのが楽しくて仕方なかったのを覚えている。
他の女の子が渉と仲良くするととられてしまうんじゃないかと思ってさりげなく邪魔さえしていたくらいだった。
あたしは馬鹿だったんだ。
渉はいつの頃からあたしを特別に見るようになっていた。そう、渉ばかり見て来たから良く分かる。あの子はあたしが好き。姉としてもそうだけど、それ以上に異性として。
だからあたしは家の中では意識して、だらしなく女性を感じさせない恰好や態度を取るようにした。
渉の事は好きだけれど、大好きだけれど、渉はあたしのせいで他の女性に興味が向かないだけかもしれない。もっと好きになれる相手が現れるかもしれないのに、あたしが枷をはめるなんて事はあってはならないはずだ。
それにあたしは姉で渉は弟、これは対等ではない。意識の奥底で姉だから、弟だからと言う図式が完成してしまっている。あたしはそんな関係を恋人に課したくはない。
渉を幸せにできる相手はきっとあたしではない。
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