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こちらは『豊穣の精霊さんは』にでてきた樹木の精霊ドリアードの散り散りになった仲間のお話でございます。※読まなくても大丈夫!
それは私が魔華の胚珠を別の場所へ運んでる途中の森のなかでのことでございました
どこからか好ましい良い音が聞こえて(人の声が出せる音域をこえておりました)きたのでございます。
誘われるがままに足は動き獣道を進むと白い小さな花が咲き乱れる場所があり
そこで目を閉じて歌ってるその姿は儚げで
整った顔は男女問わず惹きつける魅力がありましたが・・・
「まったく俺を待たせるとは焦らしプレイか?魔華のかわイイ蜜蜂ちゃん♪ さぁ、今度は俺と種を育もうか。魔華より凄いことしてヤっから覚悟しろよ?」
美しさも消し飛ぶ残念なしゃべりと頭の持ち主は妖艶に笑いかけ
何もなかった地面から飛び出した無数の木の根が檻状に編みあげられ私は閉じこめられてしまいました。
「そんな怯えた顔しなくても だいじょーぶ。俺に任せとけば痛くないし抵抗しなけりゃ優しくするよ?俺はちょー優しいから♪」
太い木の根で編みあげられた檻は頑丈でとても人間の手では出られそうにありません。
得体のしれない生き物と2人きりにされ何をされるのか分からない不安で胚珠のある腹を守るようにしゃがみこんで震えながら体を丸めれば
「有害花じゃなく精霊を増やすことに協力しろよぉ~。人間がドリアードの住処だった森を燃やしちゃったからお前が責任取って?」
と頭上から声をかけられ私には何ら関係のないことで責任を問われておりました。
どうして私がこんな目にあうのでございましょう
「ふ~ん?俺のこと無視するとかちょー不快。なら、これでどう?いつまでそうしてられるかなぁ~」
と不穏なことを言われて体は丸めたまま閉じてた目を開ければ座りこんだ私の横にミニチュアな魔華が咲いておりました。
それを音もなく歩く精霊はグシャリ!と素足で踏みつぶしたのでございます。
精霊の足の下から小さな金色の光の玉が数個見えたと思ったら霧散して精霊が足をどけるとそこには何も無くて
驚きに目を見開く私に見むきもしないでいつの間にか咲いていたミニチュアな魔華を1つづつ足で散らしてゆくのでありました。
「や、やめて!!」と精霊の体温のない足に縋りつけば精霊は私の目を覗きこみ
「俺の言うこと きーてくれる?」と問われては頷くしかありませんでした。
ミニチュアの魔華が踏みにじられるのを見てはいられなかったのでございます。
「ん~~、イイ子♪」と精霊はニヤリと笑って私の頭を撫でておりました。
父や母に頭を撫でられたのは2人あわせても片手で数えられるくらいしかなく
ずいぶん昔のことで
同年代の子が親に頭を撫でられるのを羨ましく見ていたのを思い出しておりました。
だから精霊が
「しっかし俺の魔力で作った魔華に似た疑似花で俺のゆ―こと き―ちゃうとか…どんだけ魔華にいれこんでんのぉ?」
と、つぶやいたことも耳に入っておりませんでした。
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