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1話~始まり~
「そっちにタオル持ってった!?」
「誰かこっち来て!!」
「ちょっとこれやったの誰!?」
今日は凄く賑やかだ。
今からあの人の子供が産まれるらしい。
僕なんかに貰っても嬉しくないとは思うけど、お祝いに花でも渡しに行ってみようかな。
あの人は父上に寵愛されていて、性格も、容姿も女神のよう、と言われている。
俺はあの人には会ったことがないし、名前すら知らない。でも、1度だけ見たことはある。綺麗な金髪と、陶器のように白い肌、そして目は深海のような深い青...とても美しかった。
-------❁ ❁ ❁-------
「オギャーオギャー....!」
「おめでとうございます!元気な男の子ですよ!」
「おぉ!この子は王になれますよ!」
「そうだな!あの女の息子なんか王にならせてたまるか」
「あんな無能王子に王にならせるもんか!」
ああ、やっぱりそうなんだ...
「いいのよ...王になんてならなくても...
私はこの子の意思を尊重するわ」
綺麗な鈴のような声でその人は言う。
ドアの隙間から金髪の長い女性とその手の中の子が見えた。
綺麗な絵本のようだ...
僕はそれに心を奪われてしまった。
あまりの美しさによろめいて壁に体をぶつけてしまった。
「おい、誰だ!?」
僕は全速力で逃げた。
-------❁ ❁ ❁-------
『はぁ、、、はぁ、、、ッッ』
もうここまでくれば大丈夫だろう、全力で走って握りつぶしてしまったのだろうか、花は萎れてしまっていた。
1つの役目をうまれた頃からなそうとしてきたのにその、たった一つの役目すらできない...
『ははっ...今の僕みたいだね』
乾いた笑いしか出ない。
僕は花を投げ捨てた。
白い花は月明かりに照らされ、鈍く光っていた。
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