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2話~逃亡~
月が綺麗な満月の夜。
『お母様、逃げますよ』
小さな声でお母様に囁く。
お母様は逃げやすい身軽な格好をしてベットに座っていた。
「ルナ.....。本当に逃げるの?」
『逃げますよ、さぁ!』
俺は不安そうなお母様に手を差し出す。
お母様は俺の手を握る。
「ルナフィール様、こちらです」
唯一俺たちの味方をしてくれたメイドのサナが、俺たちの荷物を持って、隠し通路の前で待っていた。
『ほら、行きますよ』
「え、えぇ....。」
お母様は名残惜しそうに城に振り返る。
『お母様?』
「分かったわ。もう、私は決めたわ。」
覚悟を決めた目で俺に向く。
ガシャン、と小さな音をたてて隠し通路のドアがしまった。
-------❁ ❁ ❁-------
城の近くの森。
月明かりだけを頼りに走ってきた俺たちのザッザッザッ、という走る音だけが静かな森に響く。
「ルナフィール様、そろそろです」
『あぁ、』
そろそろ....そろそろ国境だ。
ラルール龍王国の城は、何故か国境の近くにあり、小一時間程で国境につける。
「...ッッそろそろなの...?」
『そろそろですから、安心してください』
小一時間程とはいえ、城で運動をしていないお母様は疲れていらっしゃる。
何故か後ろが明るくなった。
不思議に思った俺たちが後ろを見ると、城の松明が全てともされていた。
『これは...俺たちがいなくなったのがバレたな。』
「予定より早いですね....ペースを上げましょうか?」
『あぁ、そうするか。お母様、もう少し頑張れますか?』
もう既に倒れそうなのお母様に声をかける。
「えぇ...ッッ!私を見くびられたら困るわよ...ッッ?」
強い目だった、これなら安心だ。
『では、行きましょう』
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