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プロローグ
月明かりが太い鉄格子の嵌った窓から忍び込み、ベッドもない檻のような冷たい床に突っ伏す『ヒグマ』の背中を淡く照らす。
両の手足を僅かに動かすと、高張力のステンレス鋼で作られた鎖がジャラリ…と鳴いた。まるで『お前に自由なぞ無い』事を警告してくるかのように。
『養分』サエ十分ナラバ。
朦朧とする頭で『ヒグマ』は考えた。
『養分』サエ喰エレバ、コンナ鎖……。
「……逃げるかい?」
部屋の隅から囁くような声がする。
「ここにいたら、共倒れだよ。……いいか? 私を殺せ。そうしたら、お前と私は『自由』になれる……」
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