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最初の企画会議で難儀していると、同僚のSという男が手を挙げた。
「心霊スポットとか、ちょっと話題になりそうじゃないですか?」
「そんな場所、この辺りにはないぞ」
無気力を隠そうともしない顔で、課長が呆れつつ言った。
「ないなら、作ればいいんですよ。俺、いいとこ知ってるんです。峠に続く国道。あれを峠の手前で左に曲がってしばらく進むと、林があるんですけど、その奥に廃神社があるんです。あれは雰囲気ありますよ」
「よく、そんな場所知ってますね」
私は生まれてから30年、ずっとこの町で生きてきたが、そんな神社の話は聞いたことがない。驚き半分、疑い半分といった私の言葉に、
「この部署に異動って決まって、町中見て回ったんです」
「けど、どうするんだ。うちに心霊スポットがあります、なんて大々的に嘘つくわけにはいかんぞ」
「いい考えがあるんですよ」
ニッと笑うS。
確かに公的に紹介するわけにはいかない。だから世間に対して影響力のある人物、いわゆるインフルエンサーに私的な形を装って情報を流してもらおうというのがSの考えだった。オカルト系のYouTuberが興味を持って撮影に来てくれたら、動画を見た人も町に来てくれるかもしれない。
「まあそれなら、問題ないか。どうせ予算も少なくてろくなことはできんし、任せていいか?」
「ええ。ありがとうございます」
自分のアイデアが採用され、Sは嬉しそうに頭を下げた。
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