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 ひとしきり毒づいたあと、母は泣き出した。  酒をコップに注ぐこともせず、瓶から直接飲みながら。  なんて感情の起伏が激しい人なんだろう。  私はキッチンの埃臭い床にうつ伏せに転がっていた、首だけ動かして母を確認した。  動く元気なんか1ミリもない。  でも、泪なんか出なかった。  自分の生体反応の一部はこのクズ母との生活で、とうの昔に失っていた。  今回の暴力虐待も初めてのことでは無い。  私の日常の一部だ。  泣き続ける母は悲劇のヒロインを頭の中で演じているに違いない。  床に封筒が落ちている、あの男が母に帰るのを促した時に渡した封筒だ。  中身が抜き取られているそれを見て私は少しクスっとした。  茶色い普通の角型封筒には、筆で『下着代』と書かれていた。    なんのジョークだろう、可笑しい。  風が当たるだけで痛い尻を晒してる私は笑った。  私は泣かない、泪なんか流さない。  それには訳があった。
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