ローリングソバット

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ローリングソバット

 フライパン交響曲の夜から一週間ぐらい後。  放課後、部活も終わり、バイトのシフトもない、たわいもない時間。  女子高生同士の会話は嚙み合わないけど楽しい。  数少ない女友達二人と一緒にマクドナルドに行こうと、駅前を歩いていた。  「アリサさん、彼氏つくったんですって?」って清美。  「まぁ…そだね」  「あー、お腹すいたー」食欲魔人の涼子。  私はあまり自覚はないのだが、私の彼氏を公言している、先輩が居るのは知っている。  「あの先輩、包容力がありそうでいいですよね?」  「デートしたら、食事おごってくれるのか?」  私は答えなかった。  涼子が両手を広げて会話を打ち消してくれた。  「肉肉ぅー、ダブルバーガーー」      私はフィレオフィッシュバーガーのセットを店員さんに、トレイに載せてもらって、友達の待つ席に向かった。  口の中ではバーガーのタルタルソースの味を舌が予測していて、口いっぱいに広がっていた。  自動ドアが私の左後方で開く音がした。  グラッと視界がゆがみ、トレイからハンバーガー達が空中に飛び出すのがスローモーションで見えた。  そして、延髄に激痛、視界は暗くなった。  清美と涼子は自動ドアから体躯のいい男子高生が入ってくるのを見ていた。  男子高生は2歩助走をつけると、床を蹴り体を宙で回転させ、伸び切った踵を靴のまま私の延髄を斬りつけた。  延髄斬り? いやこの場合。  「ローリングソバットーーー」プロレスファンの涼子が叫んだ。  「生で見たの初めてーー」何故か興奮する涼子。  床に落ちた、フィレオフィッシュバーガーを拾いながら清美は、  「先輩、お久しぶりです」男子高生に声をかけた。  私は、カエルのように伸びていた。    
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