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DV彼氏
アリサは『彼氏』のことを、心の中で『DV彼氏』と呼ぶことにしていた。
最近アリサが覚えた言葉だ。
Domestic Violence(ドメスティックバイオレンス)=家庭内暴力。
この場合、アリサはDV彼氏と同棲している訳ではないので正確ではないのだか、言わんとする意味は分かるだろう。
クズ母の行為はそのものずばりDVだが……。
アリサを支配しようと、する者達は皆等しく暴力に訴える。
違いはアリサの何処を攻撃するかだけだ。
クズ母は自分が毒親だと世間に知られたくないから、暴力は服で隠れるところを狙って行う。
殺意がある時とクスリを決めている時以外は…。
DV彼氏は主に首から上を狙う。美しいアリサの顔はDV彼氏の自慢でもあったが、不安要素でもあった。
他の男にとられる可能性があるからだ。
だから、アリサがうつむき加減で前髪で傷を隠すしぐさをしているのを好む。
この同じアリサを所有していたいという命題の背反によって、アリサの体はまんべんなく痛めつけられていた。
迷惑な話だ。
『この顔じゃ、お母さんに会えないなぁ…』
アリサは、顔のケガが次第に腫れてきているのを感じながら、思った。
『先輩っコンビニで氷買ってもいいですか?』
ほぼ脳内では組みあがってるセンテンスが口から出ない。
口は禍の元なのだ、クズ母との生活で身に染みている。
ケガの治療を要求したら、DV彼氏の気に障る可能性がある。
視界の利く右目まで攻撃されたら、歩くことができない。
アリサは手鏡で鉄拳を受けた左目を観察する。
充血っていう度を越している、完全に白目の毛細血管が切れ血が目に溜まっている。
『色んな意味でやばいかもしれない』
先輩の後ろをついて歩きながら、せめてクズ母からの追加攻撃を避ける作戦に出た。
「今夜泊ってもいいですか?」
「んーっ、、、、今日は水曜日か、じゃダメだ。お母さんと添い寝する日だ」
『クソッ、マザコンかよ』
アリサは軽い吐き気を覚えながら、公園での野宿を選んだ。
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